このページの本文へ移動

飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について

14生畜第8598号
平成15年4月1日
改正 平成17年 5月20日 17消安第 1640号
平成18年 9月14日 18消安第 6944号
平成19年 4月 2日 18消安第14358号
平成20年 4月 7日 20消安第   20号
平成20年 6月18日 20消安第 2496号
平成24年11月28日 24消安第 3947号
平成26年12月16日 26消安第 3706号
農林水産省生産局長
水 産 庁 長 官
飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について
 組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物については、これまで「組換え体利用飼料の安全性評価指針の制定について」(平成8年4月19日付け8畜B第585号農林水産事務次官依命通知)及び「組換え体利用飼料添加物の安全性評価指針の制定について」(平成8年5月17日付け8畜A第1147号農林水産事務次官依命通知)の規定により、その安全性に関する確認を行ってきたところである。
 しかしながら、近年、組換えDNA技術を応用した作物等の開発及びその実用化が国際的に広がってきており、今後更に新しい作物等の開発が予想されることにかんがみ、安全性が確認されていない作物等が国内で飼料及び飼料添加物として流通しないよう、別添1のとおり、飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令(平成14年農林水産省令第88号。以下「改正省令」という。)により安全性に関する確認を法令において義務付けるとともに、飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の規定に基づき組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性に関する確認の手続を定める件(平成14年11月26日付け農林水産省告示第1780号。以下「確認手続告示」という。)、飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の規定に基づき組換えDNA技術によって得られた生物の混入基準を定める件(平成14年11月26日付け農林水産省告示第1781号。以下「混入基準告示」という。)並びに飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の規定に基づき組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の製造基準を定める件(平成14年11月26日付け農林水産省告示第1782号。以下「製造基準告示」という。)を制定し、安全性に関する確認の手続等を定めたところである。これに伴い、改正省令等の運用上の留意事項を下記のとおりとしたので、御了知の上、貴管下関係者に対する周知徹底につき御協力をお願いする。
 なお、改正省令等の施行に伴い、「組換え体利用飼料の安全性評価指針の適用について」(平成8年4月19日付け8畜B第592号畜産局長、水産庁長官通知)及び「組換え体利用飼料添加物の安全性評価指針の適用について」(平成8年5月17日付け8畜A第1148号畜産局長、水産庁長官通知)は、廃止する。
1 安全性に関する確認の対象について
(1)確認手続告示は、現在、組換えDNA技術を応用して得られた種子植物(以下「組換え種子植物」という。)又は組換えDNA技術によって得られた非病原性の微生物を利用して製造された飼料若しくは飼料添加物であって当該微生物自体を含有しないもの(以下「組換え微生物利用飼料等」という。)が、開発され、又は流通している実態を踏まえ、制定したものである。なお、その他のものの安全性に関する確認については、個別事例ごとに農林水産省に相談されたい。
(2)既に改正省令に基づく安全性の確認を受けた組換え種子植物を用い、伝統的な育種の手法を用いて作出した品種(以下「後代交配種」という。)は、当該育種過程において組換えDNA技術を用いていないことから、新たな確認を義務付けられるものではないが、
 ① 組換えDNA技術により新たに獲得された性質が後代交配種においても変化していないこと。
 ② 亜種間での交配が行われていないこと。
 ③ 摂取量、使用部位、加工法等の変更がないこと。
  を開発者等において確認することが望ましい。
 なお、後代交配種に該当するか否かについて不明な点がある場合は、農林水産省に相談されたい。
2 安全性に関する確認の考え方について
(1)安全に関する審査について
 確認手続告示に基づく安全性に関する確認のための審査は、別添2の「組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性審査基準」に基づいて行うものとする。
(2)組換え種子植物
 組換え種子植物の安全性に関する確認は、組換えDNA技術によって付加された性質以外のものについて既存のものと同等とみなし得ることを評価した上で、組換えDNA技術によって付加されることが期待されている性質、組換えDNA技術によって発生する影響及び発生の可能性等、組換えDNA技術によって付加されたすべての事項について評価することにより行う。
 なお、この場合において、当該種子植物の利用及び加工方法についても考慮する。
(3)組換え微生物利用飼料等
 組換え微生物利用飼料等の安全性に関する確認は、既存の飼料又は飼料添加物と同等とみなし得る飼料等であることを評価した上で、組換え体、組換え体が生産する生理活性物質、培地成分等の生産物への混入、生産物中の常成分の変化その他組換えDNA技術を応用することに伴い発生するすべての事項について評価することにより行う。また、飼料等の製造、精製等の過程についても評価する。
3 組換えDNA技術応用飼料に関し、安全性の確保に支障がないものとして農林水産大臣が定める基準(以下「混入基準」という。)の適用について
(1)混入基準告示は、バルクによる大量輸送のため意図しない混入が避けられない等の飼料の流通実態を踏まえ、我が国で安全性が確認されていない組換えDNA技術応用飼料であっても、我が国と同等以上の水準の安全に関する審査の制度を有すると認める外国(以下「審査制度所有国」という。)政府により安全性が確認されているものについては、一定の安全性が確保されると考えられることから、制定したものである。
(2)審査制度所有国であるか否かの判断は、農林水産省が外国政府の審査制度について必要な情報を収集した上で、外国政府により定められた組換えDNA技術応用飼料の安全性確認に係る審査基準の内容が我が国と同等以上であり、かつ、個々の組換えDNA技術応用飼料が当該基準に基づき審査されていることが確認できることにより判断する。現在、審査制度所有国として認めるものは、アメリカ合衆国、オーストラリア、カナダ、ブラジル及びEUである。
(3)混入基準の適用対象となる組換えDNA技術応用飼料は、審査制度所有国において安全性が確認されている組換えDNA技術応用飼料とする。なお、当該飼料の飼料原料への混入が発生した場合には、農林水産省が、当該飼料に係る情報に基づき審査制度所有国の審査により安全性が確認されていることを確認した上で飼料ごとに混入基準の適用の可否を判断する。
(4)飼料が混入基準に適合しているかどうかの検査は、別添3の「組換えDNA技術応用飼料の検査方法」により行うこととする。
4 立入検査について
 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号。以下「法」という。)第4条の規定に違反のないことを確認するため、必要に応じて独立行政法人農林水産消費安全技術センターは、法第57条第1項の規定に基づく立入検査を行うものとする。検査方法は、別添3の「組換えDNA技術応用飼料の検査方法」によるものとする。
5 製造基準について
(1)製造管理マニュアル、製造作業マニュアル及び緊急時対応マニュアルには、別添4の「製造管理マニュアル、製造作業マニュアル及び緊急時対応マニュアルに定める事項」に規定する事項を記載することとする。
(2)製造安全委員会は、当該製造事業場における製造の状況に応じて組換えDNA技術を用いた製造技術、安全対策に熟知した者、個々の製造に精通した者等適切な分野の者により構成されていることが必要である。なお、製造安全委員会は、製造業者の代表者、製造事業場の長及び製造管理者に対し必要な勧告を行う必要があることから、組織内において十分な権限を与える必要がある。また、製造業者は、製造安全委員会の勧告に十分配慮し、対応することが必要である。
6 その他
(1)飼料又は飼料添加物の製造過程において組換えDNA技術を利用する者は、当該技術の安全性に影響を及ぼす知見を得た場合は、速やかに農林水産大臣に報告すること。
(2)我が国で安全性が確認されていない組換えDNA技術を応用した生物を用いてほ場試験(国外において実施されるものを含む。)を実施する者は、当該生物が飼料に混入しないよう万全の措置をとるとともに、当該生物の混入の検知に必要な特異的検知方法及び検知の標準となる生物を独立行政法人農林水産消費安全技術センターに供与すること。
改正省令等について
1 改正省令について
(1)飼料が組換えDNA技術によって得られた生物を含む場合又は組換えDNA技術によって得られた生物を利用して製造されたものを含む場合は、当該飼料は、その安全性について、確認手続告示に定める手続により農林水産大臣の確認を受けたものでなければならない。
 ただし、当該飼料が混入基準告示に定める基準に適合する場合は、この限りでない。
(2)飼料添加物が組換えDNA技術によって得られた生物を利用して製造されたものを含む場合は、当該飼料添加物は、その安全性について、確認手続告示に定める手続により農林水産大臣の確認を受けたものでなければならない。
(3)組換えDNA技術によって得られた微生物を利用して飼料又は飼料添加物を製造する場合は、製造基準告示に定める手続により農林水産大臣の確認を受けて製造しなければならない。
2 確認手続告示について
 組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性に関する確認の手続は、以下のとおりとする。
(1)組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性に関する確認を受ける際に提出する申請書の様式及び添付書類を定めた。
(2)農林水産大臣は、申請に係る飼料若しくは飼料添加物の使用に伴い有害畜産物(家畜等の肉、乳その他の食用に供される生産物で人の健康をそこなうおそれがあるものをいう。)が生産され、又は家畜等に被害が生ずることにより畜産物の生産が阻害されるおそれがないと認める場合には、確認をしなければならない。また、確認を行う場合には、農業資材審議会の意見を聴かなければならない。
(3)農林水産大臣は、確認を行ったときは、遅滞なくその旨を公表しなければならない。
(4)農林水産大臣は、新たな科学的知見を得た場合その他の場合において、現に安全性に関する確認を受けている飼料又は飼料添加物の使用に伴い有害畜産物が生産され、又は家畜等に被害が生ずることにより畜産物の生産が阻害されるおそれがあると認めるときは、農業資材審議会の意見を聴いて当該確認を取り消すとともに、その旨を公表する。
3 混入基準告示について
 組換えDNA技術応用飼料に関し、安全性の確保に支障がないものとして農林水産大臣が定める基準(以下「混入基準」という。)は以下のとおりとする。
(1)組換えDNA技術によって得られた生物の全部又は一部を含む飼料の安全性を確保する上で我が国と同等又はそれ以上の水準の安全性に関する審査の制度を有すると農林水産大臣が認める外国政府の審査により安全性が確認されている飼料を対象とする。
(2)(1)の飼料の混入基準は、組換えDNA技術によって得られた生物の混入率が1%以下とする。
4 製造基準告示について
 組換えDNA技術によって得られた微生物を利用して製造された飼料及び飼料添加物に関する製造の基準は、以下のとおりとする。
(1)組換えDNA技術によって得られた微生物を利用して飼料又は飼料添加物を製造する場合の施設、設備及び装置が満たすべき基準並びに職員及び組織の基準を定めた。
(2)事業場が(1)の基準に適合していることの確認を受ける際に提出する申請書の様式及び添付書類を定めた。
(3)農林水産大臣は、申請書の提出があったときは、申請に係る事業場が(1)の基準に適合していることの確認を行わなければならない。
(4)外国の製造事業場であって、(1)の基準と同等又はそれ以上の水準の管理がなされていると農林水産大臣が認めるものは、確認が行われたものとみなす。
(5)確認を受けた事業場において施設等の変更を行うときは、変更する事項について申請するものとする。変更の申請及びその確認は、確認の申請に準じて行うものとする。
(6)農林水産大臣は、事業場が(1)の基準に適合しなくなったと認めるときは、確認を取り消さなければならない。
(7)確認を受けた者は、組換えDNA技術応用飼料又は飼料添加物の製造開始時及び終了時並びに毎年度末に、事業場ごとに製造実施状況を農林水産大臣に報告しなければならない。
5 施行期日
 平成15年4月1日
組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の安全性審査基準
第1 組換えDNA技術によって得られた種子植物を飼料として用いる場合の安全性審査基準
1 生産物の既存のものとの同等性に関する事項
 次の(1)から(4)までの資料から総合的に判断し、当該生産物(組換えDNA技術により得られた種子植物)が既存のもの(宿主植物)と同等とみなし得ると判断できること。
 なお、この「同等とみなし得る」とは、当該種子植物の飼料としての安全性を評価するために、既存の飼料(種子植物)を比較対象として用いるという方法が適用できるということであり、ここで、(1)から(4)までに掲げる各要素について検討し、当該植物と既存のものが全体として飼料としての同等性を失っていないと客観的に判断されれば、既存の飼料との比較において、2以下の各事項に掲げられた基準に沿って審査が可能となるものであること。
(1)遺伝的素材に関する資料
ア 遺伝子が導入される宿主植物の種類及び由来
イ 遺伝子供与体の種類及び由来
ウ 挿入遺伝子の性質 
(2)家畜等の安全な飼養経験に関する資料
 申請された生産物の開発に用いた宿主植物による広範囲な家畜等の飼養経験の有無
(3)飼料の構成成分等に関する資料
ア 宿主植物及び組換え体の構成成分(たん白質、脂質等)の種類及びその量の概要
イ 宿主植物及び組換え体における毒性物質・抗栄養素(栄養素の吸収等を阻害する物質。例えば、トリプシンインヒビター、フィチン酸等)等の種類及びその量の概要 
(4)既存種と新品種との使用方法の相違に関する資料
ア 収穫時期(成熟程度)と貯蔵方法
イ 家畜等の摂取(可食)部位
ウ 家畜等の摂取量
エ 調製及び加工方法
2 組換え体の利用目的及び利用方法に関する事項
 組換え体の利用目的及び利用方法が明らかであること。
3 宿主に関する事項
(1)学名、品種、系統名等の分類学上の位置付けに関する事項
 学名、品種名及び系統名が明らかであり、それらによりその植物が飼料用に利用されてきた歴史及び広範囲な家畜等の安全な飼養経験があること。
(2)遺伝的先祖に関する事項
 宿主植物の遺伝的先祖が、毒素及び抗栄養素等の有害生理活性物質を産生する植物であるか否かが明らかであること。
(3)有害生理活性物質の生産に関する事項
 宿主植物が有害生理活性物質を産生する場合、その種類、作用及び量が明らかであること。
(4)寄生性及び定着性に関する事項
 宿主植物が、家畜等に寄生又は定着するか否かが明らかであり、寄生又は定着する場合、家畜等に悪い影響を与えるか否かが明らかであること。なお、一般に、種子植物の場合、それを食する家畜等や他の生物(飼料となる生物)に寄生又は定着することはないことから、上記(1)が明らかにされていること。
(5)ウイルス等の病原性の外来因子に汚染されていないことに関する事項
ア 当該組換え体の開発に用いた宿主植物に感染する病原体が知られているか否かが明らかであること。
イ また、そのような病原体が知られている場合は、当該病原体は家畜等に対する病原性がないか又は家畜等に対する病原性を担う遺伝子が含まれていないこと。
(6)自然環境を反映する実験条件の下での生存及び増殖能力に関する事項
 当該組換え体の開発に用いた宿主植物が、原産地及び日本での生存や増殖能力(雑草化の可能性を含む。)が明らかであり、強い雑草能力を有しないこと。
(7)有性生殖周期及び交雑性に関する事項
 他の食用及び飼料用植物への遺伝子拡散の観点から、有性生殖周期(原産地と日本でのライフサイクル)や交雑性(他の植物種との交雑の可能性)が明らかであること。
(8)飼料に利用された歴史に関する事項
 宿主植物が、飼料として利用されてきた歴史が明らかであること。
(9)飼料の安全な利用に関する事項
 当該組換え体の開発に用いた宿主植物に、安全な飼料利用のために用いられた技術的な経緯がある場合、それが明らかであること。
(10)生存及び増殖能力を制限する条件に関する事項
 宿主植物の生存及び増殖を制限する条件が明らかであること。
 雑草化した際の防除方法等が明らかであること。
(11)近縁種の有害生理活性物質の生産に関する事項
 当該組換え体の開発に用いられた宿主植物の近縁種において、有害生理活性物質を産生するものがある場合、その有害生理活性物質が当該組換え体においても産生されているか否かが明らかであること。なお、当該組換え体にその有害生理活性物質が産生されている場合は、その摂取量を基に安全性に問題がないと判断できること。
4 べクターに関する事項
(1)名称及び由来に関する事項
・発現のために利用されたプラスミド等のベクターの名称及び由来が明らかであること。
・家畜等に対する有害性が知られていないこと。
(2)性質に関する事項
ア DNAの分子量を示す事項
 DNAの分子量又は塩基数が明らかであること。
イ 制限酵素による切断地図に関する事項
 宿主植物への遺伝子の挿入に用いる発現ベクター(注:発現ベクターとは、挿入しようとする遺伝子が組み込まれたベクターのこと。以下同じ。)の切断地図が明らかにされていること。この場合、用いた制限酵素の名称の他、断片の数、サイズ及び電気泳動パターンが明らかにされていること。
ウ 既知の有害塩基配列を含まないことに関する事項
 既知の有害なたん白質を産生する塩基配列が含まれていないこと。
(3)薬剤耐性に関する事項
 プラスミド等のベクター中に、薬剤耐性遺伝子が含まれている場合は、その遺伝子の性質が明らかであること。
(4)伝達性に関する事項
 伝達性(べクターが宿主植物から他の生物へ自ら移動できる性質)がないこと。伝達性がある場合は、伝達域が明らかであること。
(5)宿主依存性に関する事項
 組換えに用いられたベクターが、他の植物、家畜等では増えないこと。他の植物で増える場合は、宿主域が明らかであること。
(6)発現べクターの作成方法に関する事項
 宿主植物への遺伝子の挿入に用いる発現ベクターの作成方法が明らかであること。
(7)発現べクターの宿主への挿入方法及び位置に関する事項
 宿主植物への遺伝子の挿入に用いる発現べクターの宿主への挿入方法及び発現ベクター内における挿入しようとする遺伝子の位置が明らかであること。
5 挿入遺伝子及びその遺伝子産物に関する事項
(1)供与体に関する事項
ア 名称、由来及び分類に関する事項
名称、由来及び分類が明らかであること。
イ 安全性に関する事項
・挿入遺伝子の供与体は、病原性及び毒素産生性がないものであること。また、大腸菌(E.coli)のように病原性がある株が知られている場合、病原性がない株に由来することが明らかであること。
・供与体に病原性又は毒素産生性があることが知られている場合、挿入遺伝子自身は病原性又は毒素産生性とは無関係であることが明らかであること。
・挿入遺伝子の供与体は、安全な摂取の経験の有無が明らかにされていること。
(2)遺伝子の挿入方法に関する事項
ア ベクターへの挿入遺伝子の組込方法に関する事項
 ベクターへの挿入遺伝子の組込方法が明らかであること。具体的には、
・宿主植物へ導入するDNA構築物(コンストラクト)の作成方法
・ベクターにプロモーター、オープンリーディングフレーム、ターミネーターを導入した順序及び方法
が明らかであること。
イ 挿入遺伝子の宿主への導入方法に関する事項
 発現に用いるプラスミドやDNA構築物(コンストラクト)等、挿入遺伝子の宿主(植物体)への導入方法が明らかであること。具体的には、
・挿入遺伝子の宿主への導入方法
・選抜方法(遺伝子が導入された宿主を選抜する方法)
・植物体としての再生方法
が明らかであること。
(3)構造に関する事項
ア プロモーターに関する事項
 用いたプロモーターの由来、性質等が明らかなこと。
イ ターミネーターに関する事項
 用いたターミネーターの由来、性質等が明らかなこと。
ウ 既知の有害塩基配列を含まないことに関する事項
 植物体に挿入されるDNAの塩基配列が全て明らかにされ、既知の有害塩基配列が含まれていないこと。
(4)性質に関する事項
ア 挿入DNAの機能に関する事項
 挿入DNAの機能及び挿入DNAから産生されるたん白質の性質、機能等が明らかであり、そのたん白質が有害作用をもたないこと。
イ DNAの分子量を示す事項
 挿入遺伝子の分子量又は塩基数が明らかであること。
ウ 制限酵素による切断地図に関する事項
 宿主植物に導入されたDNA断片について切断地図が明らかにされていること。なお、この場合、用いた制限酵素の名称、断片の数、サイズ及びサザンブロッティング解析パターンが明らかにされていること。
(5)純度に関する事項
・挿入しようとする遺伝子全体の塩基配列、大きさ及び由来が明らかであること。
・挿入しようとする全ての遺伝子はクローニングされ、目的外の遺伝子の混入がないよう純化されていること。
(6)安定性に関する事項
・挿入された遺伝子の塩基配列、大きさ及び由来が明らかであること。
・安定性を判断するに足りる複数の後代世代において、栽培試験の結果、サザンブロッティング法及びウェスタンブロッティング法により挿入遺伝子の構造、発現部位及び発現量が変化せず、安定性を認めることができること。
・なお、この場合、どのラインの何世代の植物体についてこれらの試験を行ったかが明らかであること。
・挿入遺伝子により植物に導入された形質や当該遺伝子の発現量が、世代を経るとともに変化するかどうかが観察されており、その結果、挿入された遺伝子の構造及びコピー数が安定していることが確認されていること。
(7)コピー数に関する事項
・宿主植物に挿入されたDNAの構造とコピー数(遺伝子はどのように挿入されたのか、挿入された遺伝子はどのような構造になっているのか、挿入遺伝子は1個だけかそれとも重複して入っているか、挿入遺伝子に欠失があるか等)が明らかであること。
・挿入されたDNAの近傍における植物(組換え体)のDNA配列を明らかにすること。これにより、宿主植物へこの遺伝子が挿入された組込み事象(イベント)が特定されること。すなわち、ここで安全性の確認を求めている組換え体系統(ライン)を特定及び識別ができるような塩基配列情報が明示されること。
(8)発現部位、発現時期及び発現量に関する事項
・発現部位、発現時期及び発現量が明らかであること。
・組換え体内における発現部位、発現時期及び発現量の変化等に関する考察が行われており、安全性に問題ないと認める合理的な理由があること。
(9)抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性に関する事項
 抗生物質耐性マーカー遺伝子を使用している場合は、次のア及びイの各項目について、組換え体内における変化等に関して行われた考察も含め、総合的に判断して、抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性に問題がないと判断できること。
ア 遺伝子及び遺伝子産物の特性に関する事項
(ア)構造及び機能
・遺伝子については塩基配列、たん白質については機能が明らかであること。
・挿入した抗生物質耐性マーカー遺伝子以外に有害塩基配列を含まないこと。
・発現するたん白質が酵素の場合、必要に応じ、遺伝子産物の基質特異性が明らかであること。
(イ)耐性発現の機序、使用方法及び関連代謝産物
・抗生物質の使用方法(経口、静注等)が明らかであること。
・耐性発現の機序が明らかであること。
・耐性発現に関連する代謝物質が安全性に問題のないものであること。
(ウ)同定及び定量方法
 遺伝子産物の同定及び定量方法が明らかであること。
(エ)抗生物質耐性マーカー及び関連代謝物質の不活性化法
 抗生物質耐性マーカー及び関連代謝物質の不活性化法が明らかになっていること。
(オ)消化管内環境における酸又は消化酵素による変化
 人工胃液及び人工腸液に対する安定性の試験により、安定性がないことが明らかであること。安定性がある場合においては、安全性に問題ないことを示す合理的な理由があること。
イ 遺伝子及び遺伝子産物の摂取に関する事項
(ア)予想摂取量
 発現量から予想される当該たん白質の摂取量を推定すること。
(イ)耐性の対象となる抗生物質の使用状況
 耐性の対象となる抗生物質の使用状況(使用方法、使用量、使用目的等)が明らかであること。
(ウ)環境中に存在する抗生物質耐性菌との比較
 挿入した抗生物質耐性マーカー遺伝子と同じ遺伝子を持つ耐性菌が環境中に存在しているか否かが明らかであること。
(エ)経口投与をした抗生物質の不活化推定量及びそれに伴って問題が生ずる可能性
 抗生物質耐性マーカー遺伝子の発現たん白質(抗生物質代謝酵素)の摂取量、加工過程及び消化管内における分解量、抗生物質の使用状況等から検討した抗生物質の不活化に伴う問題がないことが推察されていること。
(10)オープンリーディングフレームの有無並びにその転写及び発現の可能性に関する事項
 原則として、導入した遺伝子には、目的以外のたん白質を発現するオープンリーディングフレームが含まれていないこと。なお、その確認に当たっては、1つの遺伝子内に開始コドンとして働くATG塩基配列が複数存在しないこと、及び、目的のたん白質以外のたん白質を発現する可能性がないことがノーザンブロッティング法、RT-PCR法等を用いて確認できていること。
 仮に、目的以外のたん白質を発現する可能性のある遺伝子が含まれている場合は、当該遺伝子及びその遺伝子が発現するたん白質は安全性に問題のないものであること。
6 組換え体に関する事項
(1)組換えDNA操作により新たに獲得された性質に関する事項
 挿入DNAから生産されるたん白質の性質、機能等が明らかであり、そのたん白質は有害作用をもたないこと。他の生物への影響が明らかであること。
(2)遺伝子産物の毒性に関する事項
 既知の毒性物質との構造相同性に関する検索方法及び検索結果が明らかにされており、原則として、構造相同性がないこと。仮に構造相同性がある場合は、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。
(3)遺伝子産物の物理化学的処理に対する感受性に関する事項
 物理化学的処理により、遺伝子産物の分子量、酵素活性、免疫反応性等が変化するかどうかを示すデータが明らかにされていること。  具体的には、
・次のアからウまでの処理をした遺伝子産物(以下(3)において「物理化学的処理をした遺伝子産物」という。)の分子量が、処理前の遺伝子産物と比べてどの程度小さくなっているかについて、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動等により示すこと。
 ア 人工胃液による酸処理及び酵素(ペプシン)処理
 イ 人工腸液によるアルカリ処理及び酵素(パンクレアチン)処理
 ウ 加熱処理
・遺伝子産物が酵素の場合は、物理化学的処理をした遺伝子産物と処理前の遺伝子産物とを比べて、その酵素活性が変化しているかどうかを示すこと。
・物理化学的処理をした遺伝子産物の抗体反応性が処理前の遺伝子産物と比べて変化しているかどうかについて、ウェスタンブロット法あるいはELISA法により示すこと。なお、この場合用いる抗体は、処理前の遺伝子産物に対するポリクローナル抗体であること。
上記の一連のデータにより、遺伝子産物は物理化学的処理に対する感受性が高いことが認められること。
(4)遺伝子産物の代謝経路への影響に関する事項(既存種中の基質と反応する可能性に関する事項を含む。)
 遺伝子産物が酵素である場合は、その基質特異性が明らかにされており、原則として基質特異性が高いこと。基質特異性が低い場合は、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。
 また、遺伝子産物が酵素として植物体内の代謝系に働き、関連成分が変化した場合は、その変化等に関する考察が行われており、安全性に問題ないと認める合理的な理由があること。
(5)宿主との差異に関する事項
 組換え体に存在する栄養素や、毒素、抗栄養素等の有害生理活性物質等について、宿主植物を含めた既知の非組換え体と比較したデータにより、有意な差があるかどうかが明らかにされており、原則として有意差がないこと。有意差がある場合は、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。
(6)外界における生存及び増殖能力に関する事項
 外界における生存及び増殖能力について、宿主植物と組換え体がどの程度相違するかの情報が明らかにされており、原則として、相違ないものであること。相違がある場合は、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。
(7)生存及び増殖能力の制限に関する事項
 生存・増殖能力の制限に関し、宿主植物と組換え体がどの程度相違するかを示す情報が明らかにされており、原則として、相違ないものであること。相違がある場合は、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。
(8)不活化法に関する事項
 不活化法について、宿主植物と組換え体がどの程度相違するかの情報が明らかにされており、原則として、相違ないものであること。相違がある場合は、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。
(9)外国における認可、飼料用等に関する事項
 外国における認可状況に関する情報が明らかにされていること。また、飼料用又は食用として利用されているか否かに関する情報が明らかにされていること。
(10)作出、育種及び栽培方法に関する事項
・作出・育種及び栽培方法について、宿主植物と組換え体がどの程度相違するかの情報が明らかにされており、原則として、相違ないものであること。相違がある場合は、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。
・農薬の使用方法について明らかであること。
・農薬を代謝することで農薬耐性を示す場合は、代謝物が調べられるとともに、主な代謝物の安全性が確認されていること。
(11)種子の製法及び管理方法に関する事項
 種子の製法及び管理方法について、宿主植物と組換え体がどの程度相違するかの情報が明らかにされており、原則として、相違のないものであること。相違がある場合は、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。なお、組換え前の宿主の種子とともに、組換え後の各世代における種子を保存すること。
7 2から6までにより安全性に関する知見が得られていない場合は次の試験のうち必要な試験の成績に関する事項
 次の試験結果に基づき飼料としての安全性が確認できること。
 なお、試験方法については、原則として「飼料添加物の評価基準の制定について」(平成4年3月16日付け4畜A第201号畜産局長通知)に記載されている方法による。
(1)単回投与毒性試験
(2)反復投与毒性試験(短期)
(3)反復投与毒性試験(長期)
(4)世代繁殖試験
(5)発がん性試験
(6)変異原性試験
(7)発生毒性試験
(8)対象家畜等を用いた飼養試験
(9)その他の試験

(注)1 試験成績は、「飼料添加物の動物試験の実施に関する基準について」(昭和63年7月29日付け63畜A第3039号畜産局長、水産庁長官通知。)の記の4のアのGLP(以下「GLP」という。)に適合する施設でGLPに従って行われたものであること。
   2 合理的な理由があれば、全部又は一部を省略することができる。
第2 組換えDNA技術を応用して得られた非病原性の微生物を利用して製造された飼料及び飼料添加物の安全性審査基準
1 生産物の既存のものとの同等性に関する事項
 組換え体を利用して製造された飼料及び飼料添加物及びそれと同種の既存の飼料及び飼料添加物についての成分、性質及び使用方法に関する資料から総合的に判断して、既存の飼料及び飼料添加物と同等とみなし得ると判断できること。
 なお、この「同等とみなし得る」とは、当該飼料及び飼料添加物の安全性を評価するために、既存の飼料及び飼料添加物を比較対象として用いるという方法が適用できるということであり、ここで、成分、性質及び使用方法に関して検討し、当該飼料及び飼料添加物と既存のものが全体として同等性を失っていないと客観的に判断されれば、既存の飼料及び飼料添加物との比較において、2以下の各事項に掲げられた基準に沿って審査が可能となるものであること。
2 組換え体等に関する事項
(1)GILSP(Good Industrial Large-Scale Practice)組換え体又はカテゴリー1組換え体を安全に取り扱うことができる作業レベルでの製造に用い得る非病原性の組換え体であることに関する事項
 GILSP組み換え体であるか又はカテゴリー1組換え体であるかが明らかであること。
 なお、 GILSP組換え体であるかカテゴリー1組換え体であるかについては、「組換えDNA技術応用飼料及び飼料添加物の製造基準」別記第1によること。
(2)組換え体の利用目的及び利用方法に関する事項
 組換え体の利用目的及び利用方法が明らかであること。
(3)宿主に関する事項
ア 学名、株名等の分類学上の位置付けに関する事項
 学名及び株名が明らかであり、その微生物により一般に家畜等が曝露されていることが明らかであること。
イ 病原性及び有害生理活性物質の生産に関する事項(非病原性であること。)
 組換えに用いる微生物は非病原性であること。また、有害生理活性物質を産生する場合、その種類、作用及び量が明らかであること。
ウ 寄生性及び定着性に関する事項
 当該組換え体の開発に用いた微生物が、家畜等や他の生物に寄生又は定着するか否かが明らかであり、寄生・定着する場合、家畜等や他の生物に悪い影響を与えるか否かが明らかであること。
エ ウイルス等の病原性の外来因子に汚染されていないことに関する事項
 当該組換え体の開発に用いた微生物が病原性の外来因子(ウイルス等)に汚染されていないこと。
オ 自然環境を反映する実験条件の下での生存及び増殖能力に関する事項
 当該組換え体の開発に用いた微生物の自然環境中における生存・増殖能力が明らかであること。
カ 有性又は無性生殖周期及び交雑性に関する事項
 他の飼料、飼料添加物及び食品製造に用いられる微生物への遺伝子拡散の観点から、組換え体の開発に用いた微生物の有性生殖周期(ライフサイクル)や交雑性(どの様な生物(種を越えたもの)と交雑できるか。)が明らかであること。
キ 飼料に利用された歴史に関する事項
 当該組換え体の開発に用いた微生物が、飼料として利用されてきた歴史が明らかであること。
ク 生存及び増殖能力を制限する条件に関する事項
 当該組換え体の開発に用いた微生物の生存及び増殖能力を制限する条件があること。
ケ 類縁株の病原性及び有害生理活性物質の生産に関する事項
 当該組換え体の開発に用いた微生物の近縁株において、病原性がある場合や有害生理活性物質を産生するものがある場合、開発に用いた微生物においては、同様の病原性がないことや、その有害生理活性物質が産生されていないことが明らかであること。
(4)べクタ-に関する事項
ア 名称及び由来に関する事項
・発現のために利用されたプラスミド等のベクターの名称及び由来が明らかであること。
・家畜等に対する有害性が知られていないこと。
イ 性質に関する事項
(ア)DNAの分子量を示す事項
 DNAの分子量又は塩基数が明らかであること。
(イ)制限酵素による切断地図に関する事項
 遺伝子の挿入に用いる発現ベクターの切断地図が明らかにされていること。この場合は、用いた制限酵素の名称の他、断片の数、サイズ及び電気泳動パターンが明らかにされていること。
(ウ)既知の有害塩基配列を含まないことに関する事項
 既知の有害なたん白質を産生する塩基配列が含まれていないこと。
ウ 薬剤耐性に関する事項
 プラスミド等のベクター中に、薬剤耐性遺伝子が含まれている場合は、その遺伝子の性質が明らかであること。
エ 伝達性に関する事項
 伝達性(べクターが宿主となる微生物から他の菌株へ自ら移動(水平伝搬)できる性質)がないこと。伝達性がある場合は、伝達域が明らかであること。
オ 宿主依存性に関する事項
 組換えに用いられたベクターが、他の微生物又は家畜等では増えないこと。他の微生物で増える場合は、宿主域が明らかであること。
カ 発現べクターの作成方法に関する事項
 遺伝子の挿入に用いる発現ベクターの作成方法が明らかであること。
キ 発現べクターの宿主への挿入方法及び位置に関する事項
 遺伝子の挿入に用いる発現べクターの宿主への挿入方法及び発現ベクター内における挿入しようとする遺伝子の位置が明らかであること。
(5)挿入遺伝子及びその遺伝子産物に関する事項
ア 供与体の名称、由来及び分類に関する事項
 名称、由来及び分類が明らかであること。
イ 遺伝子の挿入方法に関する事項
(ア)ベクターへの挿入遺伝子の組込方法に関する事項
 ベクターへの挿入遺伝子の組込方法が明らかであること。具体的には、
・微生物へ導入するDNA構築物(コンストラクト)の作成方法
・ベクターにプロモーター、オープンリーディングフレーム及びターミネーターを導入した順序及び方法
が明らかであること。
(イ)挿入遺伝子の宿主への導入方法に関する事項
 発現に用いるプラスミドやDNA構築物(コンストラクト)等、挿入遺伝子の宿主(微生物)への導入方法が明らかであること。具体的には、
・挿入遺伝子の宿主への導入方法
・選抜方法(遺伝子が導入された宿主を選抜する方法)
・微生物としての再生方法
が明らかであること。
ウ 構造に関する事項
(ア)プロモーターに関する事項
 用いたプロモーターの由来、性質等が明らかなこと。
(イ)ターミネーターに関する事項
 用いたターミネーターの由来、性質等が明らかなこと。
(ウ)既知の有害塩基配列を含まないことに関する事項
 宿主に挿入されるDNAの全塩基配列が明らかにされ、既知の有害塩基配列が含まれていないこと。
エ 性質に関する事項
(ア)挿入DNAの機能に関する事項
 挿入DNAの機能及び挿入DNAから産生されるたん白質の性質、機能等が明らかであり、そのたん白質が有害作用をもたないこと。
(イ)DNAの分子量を示す事項
 挿入遺伝子の分子量又は塩基数が明らかであること。
(ウ)制限酵素による切断地図に関する事項
 宿主(微生物)に導入されたDNA断片について、切断地図が明らかにされていること。
 なお、この場合、用いた制限酵素の名称、断片の数、サイズ及びサザンブロッティング解析パターンが明らかにされていること。
オ 純度に関する事項
・挿入しようとする遺伝子全体の塩基配列、大きさ及び由来が明らかであること。
・挿入しようとする全ての遺伝子はクローニングされ、目的外の遺伝子の混入がないよう純化されていること。
カ 抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性に関する事項
 抗生物質耐性マーカー遺伝子を使用している場合は、当該遺伝子及び遺伝子産物の構造及び機能が明らかであること。
 また、生産物の製造工程において遺伝子及びその産物が安全性に問題のない程度まで除去されることが明らかでない場合は、さらに次の(ア)及び(イ)の各項目について、組換え体内における変化等に関して行われた考察も含め、総合的に判断して、抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性に問題がないと判断できること。
(ア)遺伝子及び遺伝子産物の特性に関する事項
① 構造及び機能
 遺伝子については塩基配列、たん白質については機能が明らかであること。
 挿入した抗生物質耐性マーカー遺伝子以外に有害塩基配列を含まないこと。
 必要に応じ、遺伝子産物の基質特異性が明らかであること。
② 耐性発現の機序、使用方法及び関連代謝産物
 抗生物質の使用方法(経口、静注等)が明らかであること。
 耐性発現の機序が明らかであること。
 耐性発現に関連する代謝物質が安全性に問題のないものであること。
③ 同定及び定量方法
 遺伝子産物の同定及び定量方法が明らかであること。
④ 抗生物質耐性マーカー及び関連代謝物質の不活化法
 熱等の物理的処理に対する感受性があること(酵素活性を失っていること等が明らかにされていること。)。
⑤ 消化管内環境における酸又は消化酵素による変化
 人工胃液及び人工腸液に対する安定性の試験により、安定性がないことが明らかであること。
 安定性がある場合においては、安全性に問題ないことを示す合理的な理由があること。
(イ)遺伝子及び遺伝子産物の摂取に関する事項
① 予想摂取量
 発現量から予想される当該たん白質の摂取量を推定すること。
② 耐性の対象となる抗生物質の使用状況
 耐性の対象となる抗生物質の使用状況(使用方法、使用量、使用目的等)が明らかであること。
③ 環境中に存在する抗生物質耐性菌との比較
 微生物に挿入された抗生物質耐性マーカー遺伝子の由来は、通常存在する抗生物質耐性菌と同様のものであること。
④ 経口投与をした抗生物質の不活化推定量とそれに伴って問題が生ずる可能性
 抗生物質耐性マーカー遺伝子の発現たん白質(抗生物質代謝酵素)の摂取量、調理過程及び消化管内における分解量、抗生物質の使用状況等から検討した抗生物質の不活化に伴う問題がないことが推察されていること。
キ オープンリーディングフレームの有無並びにその転写及び発現の可能性に関する事項
 原則として、導入した遺伝子には、目的以外のたん白質を発現するオープンリーディングフレームが含まれていないこと。
 なお、その確認に当たっては、1つの遺伝子内に開始コドンとして働くATG塩基配列が複数存在しないこと、及び、目的のたん白質以外のたん白質を発現する可能性がないことがノーザンブロッティング法、RT-PCR法等を用いて確認できていること。
 仮に、目的以外のたん白質を発現する可能性のある遺伝子が含まれている場合は、当該遺伝子及びその遺伝子が発現するたん白質は安全性に問題のないものであること。
(6)組換え体に関する事項
ア 組換えDNA操作により新たに獲得された性質に関する事項(非病原性であること。)
 挿入遺伝子がどのように発現するかが明らかであり、病原性を獲得しないことが明らかであること。挿入DNAから産生されるたん白質の性質・機能等が明らかであり、そのたん白質は家畜等に対する有害作用をもたないこと。
イ 宿主との差異に関する事項
 組換えに用いた株(宿主)と組換え体の非病原性及び有害生理活性物質の非生産に関する差異が明らかであり、安全性に問題のないものであること。
ウ 外界における生存性及び増殖性に関する事項
 宿主株と組換え体の外界における生存及び増殖能力がどの程度相違するかについての情報が明らかであり、安全性に問題がないものであること。
エ 生存及び増殖能力の制限に関する事項
 生存及び増殖能力の制限に関し、組換えに用いた株と組換え体がどの程度相違するかについての情報が明らかであること。
 工業的利用の場合にあっては、宿主と同程度に安全であり、外界において限られた増殖能力しか示さず、かつ、環境に悪い影響を及ぼさないこと。
オ 不活化法に関する事項
 不活化法について、組換えに用いた株と組換え体がどの程度相違するかについての情報が明らかにされており、原則として、相違ないものであること。相違がある場合は、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。
 その不活化法を用いた場合の組換え体の生存率が明らかであること。
3 組換え体以外の製造原料及び製造器材に関する事項
(1)飼料又は飼料添加物の製造原料としての使用実績及び安全性に関する事項
 飼料又は飼料添加物の製造原料としての使用実績があり、安全性について知見が得られていること。
(2)飼料又は飼料添加物の製造器材としての使用実績及び安全性に関する事項
 飼料又は飼料添加物の製造器材としての使用実績があり、安全性について知見が得られていること。
 ((1)及び(2)について確認できない場合は、飼料又は飼料添加物の製造原料又は製造器材についての安全性が明らかであること。)
4 生産物に関する事項
(1)組換え体の混入を否定する事項
 組換え体の混入は、最も適切な工程における試料を用いてドットブロットハイブリダイゼーション法等適切な試験により否定されること。
(2)製造に由来する不純物の安全性に関する事項
 製造に由来する不純物の含有量が、既存の飼料又は飼料添加物に比べ有意に増加しておらず、かつ、既存の飼料又は飼料添加物には存在しない不純物を含有しないこと。それ以外の場合においては、不純物について安全性に問題がないと判断できる合理的な理由があること。
(3)精製方法及びその効果に関する事項
 生産物の精製方法及びその効果が明らかであり、製造工程において混入する可能性のある有害物質の種類及び量を予測することができ、安全性の上から問題がないと判断できる合理的な理由があること。
(4)含有量の変動により有害性が示唆される常成分の変動に関する事項 
 含有量の変動により有害性が示唆される常成分にあっては、その濃度の変動について、既存の飼料添加物と同等であること。仮に変動があっても、安全性の上から問題がないと判断できる合理的な理由があること。 
(5)組み換え体によって製造された生産物の外国における認可及び使用等の状況に関する事項
 外国における認可状況に関する情報が明らかにされていること。また、飼料用、飼料添加物用又は食用として利用されているか否かに関する情報が明らかにされていること。
5 2から4までにより安全性に関する知見が得られていない場合は次の試験のうち必要な試験の成績に関する事項
 次の試験結果に基づき飼料又は飼料添加物の安全性が確認できること。
 なお、試験方法については、原則として「飼料添加物の評価基準の制定について」(平成4年3月16日付け4畜A第201号畜産局長通知)に記載されている方法による。
(1)単回投与毒性試験
(2)反復投与毒性試験(短期)
(3)反復投与毒性試験(長期)
(4)世代繁殖試験
(5)発がん性試験
(6)変異原性試験
(7)発生毒性試験
(8)対象家畜等を用いた飼養試験
(9)その他の試験

(注)1 試験成績は、GLPに適合する施設でGLPに従って行われたものであること。
   2 合理的な理由があれば、全部又は一部を省略することができる。
組換えDNA技術応用飼料の検査方法
1. 検体採取方法

1.1. 組換えDNA技術応用飼料の検体採取

1.1.1. トウモロコシ穀粒の検体採取
 組換えDNA技術応用飼料が不均一に分布しているということを前提として、ロットを代表するような検体採取を行うため、対象となるロットの大きさ、荷姿、包装形態に応じて、以下に掲げる検体採取を行う。検体採取に際しては、他ロットの穀粒が混入しないよう十分配慮し、使用する器具・容器包装等は使い捨てのものを使用するか、その都度、十分に洗浄等を行い使用すること。
 次に、検体採取した穀粒が均質になるよう十分に混合した後、この中から検査に必要な一定量*を採り、粉砕器等を用いて均質に粉砕する。
* トウモロコシ(CBH351)の定性及び定量分析にはそれぞれ2,400粒の穀粒、トウモロコシ(Bt10)及びトウモロコシ(DAS59132)の定性分析には500gの穀粒を使用する。

1.1.1.1. 袋積みの場合
 以下の表に従って検体採取を行う。
ロットの大きさ検体採取のための開梱数検体採取量(kg)検体数
  ≦1521.51
16 ~2531.51
26 ~9051.51
91 ~15081.51
151 ~280131.51
281 ~500201.51
501 ~1,200321.51
1,201 ~3,200501.51
3,201 ~10,000801.51
10,001 ~35,0001251.51
35,001 ~150,0002001.51
150,001 ~500,0003151.51
  ≧500,0015001.51
1.1.1.2. ばら積みの場合

1.1.1.2.1. サイロ搬入時
 サイロに搬入する際に1サイロを1ロットとして、ロット全体を代表する検体となるようオートサンプラー等を用いて検体採取を行うものとし、適正な時間的間隔をもって15回、計10kg以上を検体採取したものを縮分してサイロ毎に1検体(1.5kg以上)とする。
 すでにサイロに搬入したものについては、他のサイロに移動させる時点で同様に検体採取を行う。

1.1.1.2.2. はしけ搬入時
 はしけ(内航船を含む。)に搬入する際に1はしけを1ロットとして、ロット全体を代表する検体となるようオートサンプラー等を用いて検体採取を行うものとし、適正な時間的間隔をもって15回、計10kg以上を検体採取したものを縮分してはしけ毎に1検体(1.5kg以上)とする。

2. 安全性未確認の組換えDNA技術応用飼料の検査方法

2.1. トウモロコシ(CBH351)の検査方法

2.1.1. トウモロコシ(CBH351)の定性法
 トウモロコシの穀粒について、ラテラルフロー法または定性PCR法で行う。

2.1.1.1. 試料の準備
 検査に用いるトウモロコシ穀粒は、破砕粒や他の混入物を取り除いた完全粒とし、充分に洗浄・乾燥を行い、表面に他の付着物がないことを確認すること。
 ラテラルフロー法、定性PCR法に用いる粉砕物は、0.5mm網篩いを通過したものを用いることを推奨する。また、試料間のコンタミネーションを避けるため、粉砕時の環境や使用器具の取扱いは充分に配慮すること。コンタミネーション対策は、「JAS分析試験ハンドブック 遺伝子組換え食品検査・分析マニュアル(改訂第2版)コンタミネーション防止編」を参考にすること。

2.1.1.2. ラテラルフロー法
 検査に用いるトウモロコシ穀粒数は2,400粒とし、テストキットの仕様によって、例えば800粒用キットの場合は3回に分け、600粒用キットの場合は4回に分けて試験を行う。市販のテストキットは、Strategic Diagnostics社(SDI)製TraitChekTM Bt9 Grain Kit-100 Strips(Part# 7000012) 、Neogen Corporation社製Reveal® for Cry9C Strip Test(Part# 8003)またはこれらと同等の結果が得られるものを用いる。以下に記述する方法は、キットの説明書に記載の方法と基本的に同一である。キットの仕様・手順等が変更された場合は、キットの説明書に従い分析を行うこと。なお、試験を行う場合には、水は特に断り書きがないかぎり、全て逆浸透膜精製した水(RO水)または蒸留水を用いることを推奨する。

2.1.1.2.1. TraitChekTM Bt9 Grain Kit-100 Strips(Part# 7000012)

2.1.1.2.1.1. 実験操作
 採取したトウモロコシ穀粒から無作為に完全粒で800粒を採取し粉砕した後、粉砕物を500mL容量程度の口の広い蓋付きの容器に採り、水 250mLを加えたのち、10~20秒間、試料が全て湿潤するまでよく振とうし、静置する。もしこの段階で上澄み液が生じなければ、さらに少量の水を加え試料をよく振とうし、振とう後生じた上澄み液を確認する。次に、試料の上澄み液0.5mLをキット付属の1.5mL容チューブに移し、そのチューブにTrait Bt9テストストリップを垂直に立てる。

2.1.1.2.1.2. 判定法
 テストストリップをチューブに立てて静置し、5分経過した時点*で、テストストリップの表示部を観察する。赤色のラインがテストストリップ表示部に2本現れれば陽性、コントロールライン1本のみが現れれば陰性と判定する。また、1本も現れなければ、その試験は無効とし、再試験を行う。1検体3回(計2,400粒)の試験のうち1回でも陽性のものがあった場合、その検体を陽性と判定し、定量分析を行う。

* 5分間以上経過すると赤色のラインが濃くなる場合があり、正しく判定することができないので注意が必要である。

2.1.1.2.2. Reveal® for Cry9C Strip Test(Part# 8003)

2.1.1.2.2.1. 実験操作
 採取したトウモロコシ穀粒から無作為に完全粒で800粒を採取し粉砕した後、粉砕物を500mL容量程度の口の広い蓋付きの容器に採り、水400±20mLを加えたのち、30~40秒間、試料が全て湿潤するまでよく振とうし、静置する。次に、試料の上澄み液0.5mLをキット付属の1.5mL容チューブに移し、そのチューブにテストストリップを垂直に立てる。

2.1.1.2.2.2. 判定法
 テストストリップをチューブに立てて静置し、10分経過した時点*で、テストストリップの表示部を観察する。赤色のラインがテストストリップ表示部に2本現れれば陽性、コントロールライン1本のみが現れれば陰性と判定する。また、1本も現れなければ、その試験は無効とし、再試験を行う。1検体3回(計2,400粒)の試験のうち1回でも陽性のものがあった場合、その検体を陽性と判定し、定量分析を行う。

* 10分間以上経過すると赤色のラインが濃くなる場合があり、正しく判定することができないので注意が必要である。

2.1.1.3. 定性PCR法
 定性PCR法は、抽出されたDNAの一部をプライマ-を用いてPCR増幅し、電気泳動法により、その増幅DNAを検知する方法である。

2.1.1.3.1. トウモロコシ穀粒からのDNA抽出精製
 DNAの抽出には、採取したトウモロコシ穀粒から無作為に完全粒2,400粒を採取し、均質に粉砕したものを用いる。DNAの抽出は、シリカスピンカラムを使用する方法、界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を使用する方法等により行うが、精製操作の簡便性等からシリカスピンカラムによる抽出を推奨する。この方法以外により抽出を行う場合は、PCRに適したDNAの抽出が確認されたものを使用する。本項では以下に、シリカスピンカラム抽出法を記述する。
 DNAの抽出精製の際用いる水は、特に断り書きがないかぎり、全て逆浸透膜精製した水(RO水)または蒸留水を超純水製造装置等で17.0MΩ・cm以上精製した超純水を、121℃、15分以上オートクレーブで滅菌したものとする。また同様に、使用するチューブ、チップは使い捨てとし、使用する直前に121℃、15分以上オートクレーブで滅菌したもの又はγ線等で滅菌されたものを用いる(マイクロピペットに用いるチップはフィルターチップを推奨する)。
 なお、DNAの抽出は1検体につき、2連で行う。

2.1.1.3.1.1. シリカスピンカラムキット法(QIAGEN社DNeasy® Plant Maxi Kit使用の場合)
 均質に粉砕された試料1.0gを15mL容チューブに量り採り、予め65℃に温めておいたAP1緩衝液5mLと、RNase A(キット付属)10μLを加え、試料がチューブの底に残らなくなるまで転倒混和した後、試験管ミキサーで激しく混合し、65℃の恒温水槽中で1時間保温する。その間15分ごとに3回、試料を激しく転倒混和した後、試験管ミキサーを用いて10秒間最高速で攪拌する。反応後のチューブにAP2緩衝液1.8mLを加え、試験管ミキサーを用いて10秒間最高速で撹拌後、氷中に15分間静置する。次に、3,000×gで室温で15分間遠心分離する*1。上清を4.2mL採取し*2、QIAshredderTM Maxi spin column(lilac)に負荷し、3,000×gで室温で5分間遠心分離*1後、上清4mLを新しい50mL容チューブに移す*2。このチューブを試験管ミキサーを用いて最高速で10秒間撹拌後、3.4mLを採取し、新しい50mLチューブに移す。次いで、5.1mLの調整済みのAP3/Et-OH緩衝液を加え、試験管ミキサーを用いて最高速で10秒間撹拌後、溶液全量をDNeasy® spin column(colorless)に負荷し、3,000×gで室温で5分間遠心分離する*1。遠心後、溶出液を廃棄し、カラムに調整済みのAW緩衝液12mLを負荷し、3,000×gで室温で15分間遠心分離する*1。その後、カラムをキット付属のCollection Tubes(50mL)に移し、予め65℃に温めておいた水1mLを加え、5分間室温で静置後、3,000×gで室温で10分間遠心分離する*1。この溶出液の液量を測り、2mL容のチューブに移し、溶出液と等量の2-プロパノールを添加する。このチューブを上下にゆっくり10回転倒混和後、5分間室温で静置する。その後、12,000×gで、4℃、15分間遠心分離後、上清を廃棄する。500μLの70%エタノールを加えて沈殿物を洗浄後、再び12,000×gで、4℃、3分間遠心分離し、上清を廃棄する。沈殿物を乾燥させた後、50~100μLのTE緩衝液*3を加えて沈殿物を溶解し、DNA試料原液とする。

*1 カラムの遠心分離操作は、スイングローターを使用する。
*2 沈殿物や上層の膜を吸わないように注意する。
*3 各最終濃度が10mmol/L Tris-塩酸(pH8.0)、1mmol/L EDTA(pH8.0)となるように水を用いて調製したものをTE緩衝液とする。

2.1.1.3.2. DNA試料原液中のDNAの純度の確認並びにDNA試料液の調製と保存
 DNA試料原液の適当量を取り、TE緩衝液を加えて10~50倍希釈にしたものを分光光度計の測定に用いる。200~300nmの範囲で紫外吸収スペクトルを測定し、230nm, 260nm及び280nmの吸光度(O.D.230, O.D.260及びO.D.280*)を測定する。O.D.260/O.D.280の比が1.7~2.0であれば、DNAが充分に精製されていることを示す。溶液のO.D.260が1のときのDNA濃度を50ng/μLとして、DNA試料原液のDNA濃度を算出する。算出値をもとに、10ng/μLのPCR用DNA溶液を水で調製し、マイクロチューブに分注して-20℃以下で凍結保存する。分注したDNA溶液は、溶解後直ちに使用する。なお、DNA試料原液の濃度がPCRに必要な規定の濃度に達しないときは、そのまま用いる。

* O.D.230はDNA由来の吸収極小、O.D.260はDNA由来の吸収極大、O.D.280はたん白質等不純物由来の吸収を示すと考える。

2.1.1.3.3. PCR増幅
 PCRでは、鋳型DNAが微量に存在しても増幅される。従って、目的外のDNA(特にPCR増幅産物)の混入には特に注意を払う必要がある。また、DNAは、人間の皮膚表面から分泌されているDNA分解酵素により分解されるので、本酵素の混入を防止しなければならない。これらの点を考慮し、使用するチュ-ブ、チップは使い捨てとし、使用する直前に121℃、15分以上オートクレーブで滅菌したもの又はγ線等で滅菌されたものを用いる(マイクロピペットに用いるチップはフィルターチップを推奨する)。
 また、定性PCRの際用いる水は、特に断り書きがないかぎり、全て逆浸透膜精製した水(RO水)または蒸留水を超純水製造装置等で17.0MΩ・cm以上精製した超純水を、121℃、15分以上オートクレーブで滅菌したものとする。
 なお、操作にあたっては、専用のゴム手袋を着用し、試薬、チューブ類は氷上で保持して行う。

2.1.1.3.3.1. PCR反応液の調製
 PCR用反応チューブ1本あたり、反応液を以下のように調製する。反応液は、PCR緩衝液*1、0.20mmol/L dNTP、3.0mmol/L 塩化マグネシウム、0.2μmol/L 5'及び3'プライマー*2、及び0.625 units DNAポリメラーゼ*3を含む液に、10ng/μL に調製したDNA試料液 2.5μL(DNAとして25ng)を氷中で加え、全量を25μLにする。次に、その反応チューブをPCR増幅装置*4にセットする。反応条件は次のとおりである。95℃に10分間保ち反応を開始させた後、95℃ 0.5分間、60℃ 0.5分間、72℃ 0.5分間を1サイクルとして、40サイクルのPCR増幅を行う。40サイクル終了後72℃ で7分間保った後、4℃で保存し、得られた反応液をPCR増幅反応液とする。PCR反応の陰性コントロールとして、必ずプライマーを加えないもの並びにDNA試料液を加えないものについても同時に調製する。また、陽性コントロールとして、市販の陽性コントロールプラスミド*2を用いる。なお、試料からDNAが抽出されていることの確認として、各DNA試料液ごとにトウモロコシ内在性遺伝子を増幅するプライマーを用いて同様にPCR増幅を行う。

*1 PCR緩衝液
 PCR buffer II(アプライドバイオシステムズ社製)及び同等の結果が得られるものを用いる。
*2 使用するプライマー、陽性コントロールは次のものを用いる。
・内在性遺伝子(Zein)検知用プライマー対:ニッポンジーン(#318-05671)又はファスマック(#M9-1M)
・CBH351検出用プライマー対:ニッポンジーン(#315-05681)又はファスマック(#M7-1M)
・CBH351確認用プライマー対:ニッポンジーン(#312-05691)又はファスマック(#M8-1M)
・CBH351 陽性コントロールプラスミド:ニッポンジーン(#317-04921)又はファスマック(#PM-3)
 これらの試薬は(株)ニッポンジーン(〒930-0983富山市問屋町1-8-7、Tel.076-451-6548、Fax.076-451-6547)、(株)ファスマック(〒243-0041厚木市緑ヶ丘5-1-3、Tel.046-295-8787、Fax.046-294-3738)から購入可能である。
*3 DNAポリメラーゼ
 AmpliTaq Gold® DNAポリメラーゼ(アプライドバイオシステムズ社製)を用いる。
*4 PCR増幅装置
 GeneAmp® PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。

2.1.1.3.4. アガロ-スゲル電気泳動
 PCR増幅反応液をアガロ-スゲル電気泳動により分離し、DNA増幅バンドを確認する。

2.1.1.3.4.1. アガロースゲルの作成
 ゲルの濃度が3%となるように、必要量のアガロ-スを秤量し、TAE緩衝液*1を加え、加熱してアガロ-スを溶解する。ゲルを前染色にする場合は、溶解したゲル100mL当たり、5μLのエチジウムブロミド溶液(10mg/mL)*2を加える。ゲルが50℃前後まで冷えたらゲルメ-カ-にゲルを流し込み、コームを取りつける。室温で静置し、ゲルが冷えて固まったらコームを抜いて使用する。ゲルはすぐに使用するのが望ましいが、緩衝液に浸して数日間保存することも可能である。

*1 各最終濃度が40mmol/L Tris-酢酸、1mmol/L EDTAとなるように蒸留水を用いて調製したものをTAE緩衝液とする。
*2 エチジウムブロミド
 2本鎖DNAの鎖の間に入り込む蛍光試薬であり、強力な変異原性がある。取扱いには必ず手袋をはめ、粉末を取り扱う際にはマスクを着用すること。

2.1.1.3.4.2. 電気泳動
 TAE緩衝液を満たした電気泳動槽にゲルをセットする。PCR増幅反応液7.5μLと適当量のゲルローディング緩衝液を混ぜ合わせた後、ゲルのウェルに注入する。同じゲルに、DNA分子量マーカーも泳動する。ゲルへの試料注入に時間がかかりすぎると、DNAが拡散し鮮明な結果が得られにくくなるので注意する。次に、100V定電圧で電気泳動を行い、ゲルローディング緩衝液に含まれるBPB溶液がゲルの1/2から2/3まで進んだところで電気泳動を終了する。

2.1.1.3.4.3. ゲルの染色(後染色)
 前染色を行った場合は本項の操作は必要ない。
 ゲルが浸る量のTAE緩衝液が入った容器に、泳動後のゲルを移し入れる。次に緩衝液100mL当たり、5μLのエチジウムブロミド溶液(10mg/mL)を加え、容器を振とう器に乗せて軽く振とうしながら30分程度染色する。

2.1.1.3.4.4. ゲルイメージ解析
 ゲルイメージ解析装置内のステ-ジに食品包装用ラップ*1を置き、その上に染色が終了したゲルをのせて紫外線(312nm)*2を照射する。ゲルイメージ解析装置の画面で電気泳動パタ-ンを確認する。DNA分子量マーカー及び陽性コントロールと比較して目的のバンドの有無を判定する。陰性コントロールで対応するPCR増幅バンドが検知された場合は、DNA抽出操作以降の結果を無効として、改めて実験をやり直す。泳動結果は画像デ-タとして保存しておく。

*1 食品包装用ラップ
 ポリ塩化ビニリデン製のフィルムでないと紫外線は吸収されてしまい、像が得られない場合があるので注意を要する。
*2 紫外線
 紫外線は、特に目に対し有害である。防護眼鏡を着用するなど必要な措置を講じること。

2.1.1.3.5. 結果の判定
 電気泳動の結果、2連抽出試料のどちらか一方でも、内在性遺伝子検知用プライマー対(対照用プライマー対)による157bpのPCR産物、CBH351検出用プライマー対による170bpのPCR産物及びCBH351確認用プライマー対による171bpのPCR産物が全て、検出された場合、本検体はCBH351陽性と判定する。
 どちらの試料からも、対照用プライマー対で予定長のPCR産物が検出され、CBH351検出用プライマー対で予定長のPCR産物が検出されなかった場合は、陰性と判断する。CBH351検出用プライマー対で予定長のPCR産物が検出されても、確認用プライマー対で予定長のPCR産物が検出されなかった場合は、陰性と判定する。
 どちらか一方の試料で、対照用プライマー対により内在性遺伝子が検出されなかった場合、再度電気泳動以降の操作を行い、それでも内在性遺伝子が検出されなかった場合は、その試料の結果を無効とし、もう一方の試料の結果により判定を行う。どちらの試料からも内在性遺伝子が検出されなかった場合、DNAの再抽出を行い試験を実施する。
 陽性と判定された検体については、定量分析を実施する。
判定例
 試料番号
抽出1対象プライマー
検出用プライマー
確認用プライマー
抽出2対象プライマー
検出用プライマー
確認用プライマー
判定陽性陽性陽性陽性陰性陰性陰性陰性
 試料番号9の例の場合には、3回目の抽出を行う。
 +は陽性、-は陰性、/は検査不要を表す。
2.1.2. トウモロコシ(CBH351)の定量法
 トウモロコシの穀粒について、ELISA法で行う。

2.1.2.1. 試料の準備
 検査に用いるトウモロコシ穀粒は、破砕粒や他の混入物を取り除いた完全粒とし、充分に洗浄・乾燥を行い、表面に他の付着物がないことを確認すること。分析には無作為に2,400粒を採取し、均質に粉砕したものを用いる。
 ELISA法による定量値は、粉砕した粒度の影響を受ける。そのため粉砕は、使用するキットで推奨されている方法により行うこと。また、試料間のコンタミネーションを避けるため、粉砕時の環境や使用器具の取扱いは充分に配慮すること。コンタミネーション対策は、「JAS分析試験ハンドブック 遺伝子組換え食品検査・分析マニュアル(改訂第2版)コンタミネーション防止編」を参考にすること。

2.1.2.2. ELISA法
 市販のテストキットは、Strategic Diagnostics社(SDI)製 GMOChekTM Bt9 Maize Test Kit(Part# 7110030)またはこれと同等の結果が得られるものを用いる。以下に記述する方法は、キットの説明書に記載の方法と基本的に同一である。キットの仕様・手順等が変更された場合は、キットの説明書に従い分析を行うこと。なお、試験を行う場合には、水は特に断り書きがないかぎり、全て逆浸透膜精製した水(RO水)または蒸留水を用いることを推奨する。

2.1.2.2.1. 準備
 全ての試薬は、使用する1時間前には冷蔵保存から取り出し、室温に戻しておくこと。予め、試料数に応じ、必要量のバッファー希釈液を調製しておくこと。分析は1検体につき2連で行い、その平均値を測定値とする。

2.1.2.2.2. 実験操作
 均質に粉砕された粉砕物4.0gを適当な容器に量り取り、希釈済バッファーを48mL加え、振とう機又は試験管ミキサーで1分間振とうする。10分間静置後、1分間振とうする操作を3回行った後、上清を15mL遠心管にとり、3,000~5,000rpmで5分間遠心分離し、生じた上清を試料液とする。
 プレート各ウェルにBt9酵素複合体を100μLずつ滴下した後、スタンダード及び試料抽出物を100μL滴下する* 。プレートシーラーで覆い、約30秒間よく混合し、遮光して室温で1時間反応させる。反応後、希釈済バッファー300μLで洗浄操作を5回行う。この時、ウェル内に水滴が残らないようにする。洗浄後発色液を100μL滴下し、30秒間よく混合し、遮光して室温で10分間反応させる。反応後、反応停止液100μLを各ウェルに滴下し、発色を止める。反応停止液を滴下後15分以内にマイクロプレート用フォトメーター(450nm)で吸光度を測定する。

* ウェル間の反応時間差を少なくするため、ウェルへの試薬等の滴下順序は一定にし、すばやく操作を行うこと。

2.1.2.2.3. 試験の成立条件
 以下の条件を満たした場合、試験が成立したものとする。
(a)陰性コントロールの吸光度平均が0.20以下であること。
(b)0.10%標準の吸光度平均が1.0以上であること。
(c)0.0075%、0.025%及び0.10%標準の各変動係数(CV)が15%以下であること。
(d)標準試料の直線回帰式における相関係数が0.96以上、多項式の場合は0.98以上であること。
(e)各試験試料について反復測定された吸光度のCVが15%以下であること。ただし、この条件は反復測定された吸光度の平均値が0.20以上の場合にのみ適用される。
2.1.2.2.4. 結果の判定
 各標準試料及び各試験試料について吸光度の平均値を求める。標準試料の値から検量線を作成し、試験試料中のCBH351混入率を換算する。

2.2. トウモロコシ(Bt10)の検査方法

2.2.1. トウモロコシ(Bt10)の定性法
トウモロコシ穀粒について、定性PCR法で行う。なお、試料の準備は2.1.1.1.に定めるところにより行う。また、定性PCR法は2.1.1.3.3.1.(PCR反応液の調製)及び2.1.1.3.5.(結果の判定)を除き2.1.1.3.に定めるところにより、PCR反応液の調製及び結果の判定は以下に定めるところにより行う。

2.2.1.1. PCR反応液の調製
PCR用反応チューブ1本あたり、反応液を以下のように調製する。反応液は、PCR緩衝液*1 、0.16mmol/L dNTP、1.5mmol/L 塩化マグネシウム、0.6μmol/L5’及び3’プライマー*2並びに0.8units DNAポリメラーゼ*3を含む液に、10ng/μLに調製したDNA試料液5.0μL(DNAとして50ng)を氷中で加え、全量を25μLにする。次に、その反応チューブをPCR増幅装置*4にセットする。反応条件は次のとおりである。94℃に10分間保ち反応を開始させた後、94℃ 25秒間、62℃ 30秒間、72℃ 45秒間を1サイクルとして、40サイクルのPCR増幅を行う。40サイクル終了後72℃で7分間保った後、4℃で保存し、得られた反応液をPCR増幅反応液とする。PCR反応の陰性コントロールとして、必ずプライマー対を加えないもの及びDNA試料液を加えないものについても同時に調製する。また、陽性コントロールとして陽性コントロールプラスミド*5を用いる。なお、試料からDNAが抽出されていることの確認として、各DNA試料液ごとに、トウモロコシ内在性遺伝子を増幅するプライマー対(対照用プライマー対)*6を用い、同様にPCR増幅を行う。

*1 PCR緩衝液
 PCR buffer II(アプライドバイオシステムズ社製、塩化マグネシウムを含まないもの)又は同等の結果が得られるものを用いる。
*2 Bt10 検出用プライマー対は以下のとおりである。なお、ニッポンジーン(#317-06621)から購入可能である。
 F-primer(JSF5):5’-CAC ACA GGA GAT TAT TAT AGG GTT ACT CA-3’
 R-primer(JSF5):5’-ACA CGG AAA TGT TGA ATA CTC ATA CTC T-3’
*3 DNAポリメラーゼ
 AmpliTaq Gold® DNAポリメラーゼ(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。
*4 PCR増幅装置
 GeneAmp® PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ社製)又は同等の結果が得られるものを用いる。
*5 陽性コントロールプラスミドはニッポンジーン(#317-06621)から購入可能である。

*6 対照用プライマー対は以下のとおりである。
 内在性遺伝子(Zein)検出用プライマー対:ニッポンジーン(#318-05671)又はファスマック(#M9-1M)

2.2.1.2. 結果の判定
 電気泳動の結果、2連抽出試料のどちらか一方でも、内在性遺伝子検出用プライマー対(対照用プライマー対)による157bpのPCR産物、Bt10検出用プライマー対による117bpのPCR産物及びBt10確認用プライマー対*1による151bpのPCR産物*2が全て、検出された場合、本検体はBt10陽性と判定する。
 どちらの試料からも、対照用プライマー対で予定長のPCR産物が検出され、Bt10検出用プライマー対で予定長のPCR産物が検出されなかった場合は、陰性と判断する。Bt10検出用プライマー対で予定長のPCR産物が検出されても、確認用プライマー対で予定長のPCR産物が検出されなかった場合は、陰性と判定する。
 どちらか一方の試料で、対照用プライマー対により内在性遺伝子が検出されなかった場合、再度電気泳動以降の操作を行い、それでも内在性遺伝子が検出されなかった場合は、その試料の結果を無効とし、もう一方の試料の結果により判定を行う。
 どちらの試料からも内在性遺伝子が検出されなかった場合、DNAの再抽出(1点)を行い試験を実施する。3点目のDNA抽出液を用いた場合でも内在性遺伝子が検出されなかった場合、本試料からのトウモロコシ(Bt10)の検出は不可能とする。
 判定例は、2.1.1.3.5.の判定例の表を参照のこと。

*1 Bt10確認用プライマー対は以下のとおりである。なお、ニッポンジーン(#317-06611)から購入可能である。
 F-primer(Bt10LS-5’):5’-GCC ACA ACA CCC TCA ACC TCA-3’
 R-primer(Bt10LS-3’):5’-GAA GTC GTT GCT CTG AAG AAC AT-3’
*2 Bt10確認用プライマー対を用いる場合のPRC条件は以下のとおりである。94℃に10分間保ち反応を開始させた後、94℃25秒間、65℃30秒間、72℃45秒間を1サイクルとして、40サイクルのPCR増幅を行う。次に終了反応として、72℃で7分間保った後、4℃で保存し、得られた反応液をPCR増幅反応液とする。

2.3. トウモロコシ(DAS59132)の検査方法

2.3.1. トウモロコシ(DAS59132)の定性法
 トウモロコシ穀粒について、リアルタイムPCR*を用いた定性PCR法で行う。なお、試料の準備は2.1.1.1に定めるところにより行う。
*リアルタイムPCR
 リアルタイムPCR は、ABI PRISMTM 7700、ABI PRISMTM 7900HT 若しくはABI PRISMTM 7500 又は同等の結果の得られるものを用いる。
2.3.1.1. プライマー対及びプローブ
2.3.1.1.1. トウモロコシ陽性対照用プライマー対及びプローブ
 トウモロコシ陽性対照用試験はトウモロコシに普遍的に存在する内在性遺伝子として、スターチシンターゼIIb(SSIIb)遺伝子を用い、同遺伝子を標的とするプライマー対SSIIb-3*とプローブSSIIb-Taq*を用いる。

*トウモロコシ陽性対照用プライマー対SSIIb-3 及びプローブSSIIb-Taq は、ニッポンジーン又はファスマックにて購入可能である。
2.3.1.1.2. DAS59132 検出用プライマー対
 F-primer(32f):5’-CCG CAA TGT GTT ATT AAG TTG TCT AAG-3’
 R-primer(32r):5’-GGT GAA TGT CGC CGT GTG T-3’
 (各プライマーは水で溶解する。)

2.3.1.1.3. DAS59132 検出用プローブ
 5’-FAM-CAA TTT GTT TAC ACC AGA GGC CGA CAC G-TAMRA-3’
 (プローブは水で溶解する。)

2.3.1.2. PCR用反応液の調製
 PCR 用反応液は25µL/wellとして調製する。その組成は以下のとおりである。Universal PCR Master Mix*1 12.5µL、対象プライマー対溶液(各プライマー、10µmol/L)1.0µL*2、対象プローブ溶液(10µmol/L)0.5µLを混合し、水で全量20µLに調製後、10ng/µL DNA試料液5.0µL(50ng)を添加する*3。PCR反応の陰性コントロールとして、必ずDNA試料液を加えず水で全量25µL としたものも同時に調製する。分注操作終了後、真上からシール*4 し、完全にウェルを密閉する。このとき、しわが寄らないよう注意し、専用のシーリング用アプリケーターを用いて行う*5。最後にウェルの底を観察し、底に気泡がある場合は、プレートの縁を軽く叩いて気泡を抜いておく。プレートの確認後、ABI PRISM Optical Cover Compression Pad*6 を茶色の面が上になるよう、プレートの上面にセットする。試験は、1DNA試料液あたり2well並行で行うものとし、PCR用反応試薬は2well分を同時に調製する。

*1 Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems 社)
 本試薬は粘性が高いため、混合操作を行う際には、混合が確実に行われるように注意する。不十分な場合には、PCRがうまくいかない場合がある。使う直前には必ずボルテックスミキサーを用いて3秒程度混合した後、軽く遠心し、溶液を試料管の底に集めておいてから使用する。また、ウェルに分注する際は、以後撹拌、遠心が困難なことを考慮し、ウェルの底に確実に入れる。
*2 対象プライマー対溶液量
 トウモロコシ陽性対照用試験では各プライマー(25µmol/L)を用いる場合には0.5µLを加えること。
*3 可能であれば、陽性対照としてDNA試料液の代わりに陽性対照プラスミドを用いた反応液を調製することが望ましい。
*4 (ABI PRISMTM 7900、7500)96ウェルプレート、シール及びシーリングアプリケーター
 MicroAmp Optical 96-Well Reaction Plate(Applied Biosystems 社)及びABI PRISM Optical Adhesive Cover(Applied Biosystems 社)を使用する。シーリングの詳細については製品付属のマニュアルを参考のこと。
*4 (ABI PRISMTM 7700)96ウェルプレート及びプレートの蓋
 MicroAmp Optical 96-Well Reaction Plate(Applied Biosystems 社)及びMicroAmp Optical Caps、8caps/strips(Flat)(Applied Biosystems 社)を使用する。
*5 当該操作はABI PRISMTM 7700を使用する場合は必要ない。
*6 ABI PRISM Optical Cover Compression Pad
 ABI PRISM Optical Cover Compression Pad(Applied Biosystems 社)を使用する。20回以上の繰り返し使用は、定量結果に影響を及ぼす可能性があるため、避けること。なお、ABI PRISMTM 7700及びABI PRISMTM 7500では、当該Padは使用しない。

2.3.1.3. プレート情報の設定
 反応に際しては、プレート情報の設定を行わなければならない。設定を行う項目は、検体の配置と種類及び、プローブ特性である。具体的には新規シート上で、調製したプレートの配置に対応するように気を付けながら、検体の種類(「UNKN」:DNA 試料液)の設定を行う。またプローブ特性に関しては、トウモロコシ陽性対照用、DAS59132検出用ともに、Reporterが「FAM」、Quencherが「TAMRA」となるように設定する。なお、トウモロコシ陽性対照用、DAS59132検出用ともに、Passive Referenceを「ROX」と設定する。

2.3.1.4. PCR
 装置にプレートをセットし、反応とデータの取り込みを開始する。反応条件は以下のとおりである。50℃、2分間の条件で保持した後、95℃で10分間加温し、ホットスタート法で反応を開始する。その後、95℃15秒、60℃1分を1サイクルとして、40サイクルの増幅反応を行う。Remaining timeが0分となっていることを確認し、反応を終了させた後、測定結果の解析を行う。

2.3.1.5. 結果の判定
 トウモロコシ陽性対照用試験およびDAS59132検出用試験のいずれについても、結果の判定は、Amplification plot上で指数関数的な増幅曲線とCt 値の確認およびmulticomponent上での対象色素由来の蛍光強度(FAM)の指数関数的な明確な増加の確認をもって行う。第一に目視でAmplification plot上に指数関数的な増幅曲線が確認された場合に陽性を疑う。次いでベ-スライン(3サイクルから15サイクル)のΔRn のノイズ幅の最大値の上側で、安定した指数関数的な増幅曲線上で交わるTh.Lineを選択する。そのTh.LineからCt値が得られるか否かを解析する。その後トウモロコシ陽性対照用試験およびDAS59132検出用試験の両方において、38未満のCt値が得られた場合に陽性と判定し、38未満のCt値が得られない場合は陰性と判定する。なお、上記判定により陽性が判定された結果についてmulticomponentを解析し、目視でFAMの蛍光強度の指数関数的な増加が観察でき、ROXの蛍光強度の明確な下降やFAMの蛍光強度の緩やかな上昇がないことを確認する。

 また、どちらか一方の抽出液において、トウモロコシ陽性対照用試験で38未満のCt値が得られない場合には、リアルタイムPCRを用いた定性PCR法以降の操作を行い、それでも38未満のCt値が得られない場合には、その抽出液での結果を無効とし、もう一方の抽出液の結果のみで判定する。2つのDNA抽出液ともにトウモロコシ陽性対照用試験で38未満のCt値が得られない場合には、改めて3回目のDNA抽出精製を行い、さらにリアルタイムPCRを用いた定性PCR法以降の操作を実施して、判定を行う。再抽出(3点目)のDNA抽出液を用いた場合でもトウモロコシ陽性対照用試験で38未満のCt値が得られない場合には、本試料からのトウモロコシ(DAS59132)の検出は不可能とする。判定例は、2.1.1.3.5の判定例の表を参照のこと。(ただし、確認用プライマーの欄は除く。)
製造管理マニュアル、製造作業マニュアル及び緊急時対応マニュアルに定める事項
1 製造管理マニュアル
 次の事項について定められていること。
(1)設備及び装置の管理に関する事項
ア 製造作業終了後の洗浄、消毒の方法
イ 培養装置、除菌装置等の設置時及び定期点検
ウ 設備又は装置の機能に係る部品の改造又は交換時の性能検査
エ 除菌装置の部品交換時、定期検査時等の滅菌方法
オ カテゴリー1組換え体を利用した飼料又は飼料添加物の製造にあっては、製造基準告示別記第1の2に規定する要件を満たすための管理方法
(2)組換え体の保管に関する事項
ア 組換え体を含む材料への組換え体を含む旨の表示方法
イ 組換え体を保管中の保管施設への組換え体を保管している旨の表示方法
(3)組換え体の運搬に関する事項
ア 組換え体を含む材料を作業区域外へ運搬する方法
イ 運搬容器への注意表示の方法
(4)組換え体の生物学的性状に関する試験及び検査に関する事項
ア マスターセルバンク(すべての製造用細胞シードの元になる種株であり、一般的には研究段階で作成し、クローン化した組換え体を培養した後分注し、その遺伝的性質が一定の継代培養の範囲内で十分に安定であることを確認したものであって、安定性が確認された条件で保存しているものをいう。以下同じ。)の作製時及び保存中の安定性確認のため以下に定める試験及び検査を実施すること
(ア)組換えDNA技術により付与された組換え体の性質が保持されていること等目的とする機能の保持に関する項目
(イ)組換え体が保持しているベクター及び挿入DNAの基本的構造の維持に関する項目
(ウ)マスターセルバンクに他の生物が混入していないこと等組換え体の同定及び均一性に関する項目
イ マスターセルバンクの保存中の試験及び検査により、組換えDNA技術応用飼料又は飼料添加物の安全性に影響を与えるおそれのある変異が生じた場合の措置
ウ 組換えDNA技術応用飼料又は飼料添加物の製造ごとに用いる組換え体の生物学的性状の検査を実施すること
エ その他組換え体の安全性を確認する上で必要な事項についての検査を実施すること
(5)組換えDNA技術応用飼料又は飼料添加物の取扱いに関する事項
ア 組換えDNA技術によって得られた微生物を利用して飼料又は飼料添加物についての管理規格
イ 検査の結果、管理規格に不適合であった場合の措置
(6)組換え体による汚染の防止対策
2 製造作業マニュアル
 次の事項について定められていること。
(1)作業手順
(2)作業区域への組換え体の取扱に関する必要事項の表示方法
(3)作業区域において組換え体を扱い作業している旨の表示方法
(4)作業区域における作業中の着衣の規定
(5)作業区域への製造従事者以外の者が立ち入る際の規定
(6)組換え体による汚染の防止対策
3 緊急時対応マニュアル
 次の事項について定められていること。
(1)組換え体を含む培養液の流出等の事故に対する対策
(2)緊急時の作業手順
(3)緊急時の連絡体制
(4)事故の発生及び対応に関する報告

▲このページの先頭に戻る